ただでさえ根拠のあやしい噂話がさまざまに飛び交っている、インターネットの世界。
その世界の片隅で幅をきかせているのが、”説得”と”洗脳”のプロであり、仕掛けた罠に獲物がかかるのを今か今かと待ち受けている、通販業界のみなさん。さらにその中でも、科学的な話をすっ飛ばし、売るための手練手管を研究し尽くした最たる業界が、健康食品の世界です。
彼らの前では、消費者であるわれわれは無力なものです。彼らに騙されないためには、一体どうすればよいのか?
簡単なことです。あなたが信じるべきなのはたったひとつ。「科学」です。
ここでは、健康食品業界にはびこる都市伝説を紹介していきます。
今回のテーマは「アンチエイジング(エイジングケア)」です。
目次
- 抗酸化物質を食べても、老化防止には役に立たない
- コラーゲンを食べても、美肌になったりはしない
- 白髪の原因は、メラニン量の不足とは限らない
- 「お肌のゴールデンタイム」は、実は存在する
アンチエイジングの真実1:抗酸化物質を食べても、老化防止には役に立たない
アンチエイジングの世界では、抗酸化物質の作用によって活性酸素を取り除き、老化を予防する、若返る、寿命が延びる……というような話をよく耳にしますね。老化予防、若返り、寿命を延ばす。多くの人の興味をかきたてるテーマです。そのため抗酸化作用と老化の関係については、これまでにさまざまな研究がなされました。
線虫に抗酸化物質を投与した、ショウジョウバエに投与した。そうしたら寿命が延びた!ですって。
でも人間と線虫やハエじゃあ、細胞の構造が違うわけです。
実際に、抗酸化物質を16万人に及ぶ人にサプリメントとして食べさせた実験では、死亡率の改善は全く見られませんでした。そのうえ、ビタミンAやビタミンE、ベータカロチンを摂取した人は死亡率が上昇しました。
果物や野菜を中心とした食事は、抗酸化物質が多く含まれるから老化防止になる、といった話もありますが、現在では検知できるような効果が見当たらず、疑問視されています。
抗酸化物質を食べても、活性酸素の細胞攻撃は防げない
活性酸素は発生したらその瞬間に反応し、細胞に障害を与えます。そしてそれはすぐさま修復されます。これが人間の体内では1秒間に万単位の回数で繰り返されているのです。で、抗酸化物質によって活性酸素を除去したり無害化したりしようとしても、発生した直後に反応する活性酸素の細胞攻撃を防ぐには時すでに遅し。だって発生した瞬間の出来事なんだから。
そもそも活性酸素は老化の主な原因ではない
活性酸素が細胞を傷つけ、それが蓄積されて老化する。という話が一般に広まっていますが、マウス実験では、むしろ活性酸素濃度が高いマウスのほうが寿命が延びたという結果も出ており、最近の研究では活性酸素による細胞攻撃が老化の原因ではないことが解明されています。また、とりわけ肌の老化に関しては、主要な原因は紫外線によるダメージです。
>活性酸素と抗酸化作用について詳しくはこちら「活性酸素と抗酸化作用の真実とは」
アンチエイジングの真実2:コラーゲンを食べても、美肌になったりはしない
コラーゲン入りのサプリとかドリンクとかありますよね。お肌に良さげっぽいうたい文句の商品。
でも別にコラーゲンが特別にお肌に作用するというわけではありません。コラーゲンがお肌に良いというのなら、すべての食べものはお肌に良いとすらいえます。
コラーゲンとして吸収されないから意味がない
確かに、皮膚の生成にコラーゲンは必須のものです。構成要素ですからね。
ですが、コラーゲンはただのたんぱく質の一種です。
コラーゲンを口から摂取しても、そのままの形では分子量が大きすぎて吸収できないため、腸管で小さなアミノ酸に分解された後で吸収されます。つまりコラーゲンを食べるということは、アミノ酸を食べることとなんら変わりないのです。しかも必須アミノ酸のひとつである「トリプトファン」を全く含んでいないので、「アミノ酸スコア」はゼロという評価になります。
そりゃあ確かに、吸収したアミノ酸が、体内でコラーゲンへと再合成されるかもしれませんし、再合成されたコラーゲンが、皮膚に使用されることも、そりゃああるでしょう。でも骨に使用されるかもしれませんし、じん帯や内臓に使用されるのかもしれません。皮膚に使用されるかどうかはあなたの意思とは無関係であり、あなたの体が判断することです。
それでも飲まないよりは飲んだほうがマシなんじゃないか、という反論もあるかもしれません。
でも、販売中のコラーゲンドリンクなんて、コラーゲンがせいぜい5グラムとか10グラムとか、その程度のものです。それならちゃんとメシを食え。
つまり、コラーゲン入りの商品に毎月何千円もの金額を払うくらいなら、プロテインを飲むとか、食事をしっかり摂ったりしたほうがはるかに効果的です。日ごろの食生活でたんぱく質が病的に不足しているというのなら、効果あるかもしれませんねぇ。もちろん、食生活を見直したほうが早いですが(笑)
コラーゲンを口から摂取して肌の材料として使われることを期待するよりも、コラーゲンを体内で産生する「繊維芽細胞」を活性化することを試みたほうが、まだ美肌に活きる可能性があります。繊維芽細胞は活性酸素による攻撃にさらされているので、抗酸化物質によって活性酸素を除去し、保護する必要があります。(活性酸素について詳しくはこちら→「活性酸素と抗酸化作用の真実とは」)
「低分子コラーゲン」も、所詮はコラーゲン
「低分子なので吸収されやすいコラーゲンです」といううたい文句の「低分子コラーゲン」というものも出回っています。これって、まるで分解されずにコラーゲンとしてそのまま吸収されるかのような印象を受けちゃいますが、言葉のマジックですね。
低分子コラーゲンも、ふつうのコラーゲンと同じく、一度分解されてアミノ酸となることは変わりありません。確かに最初から低分子であれば「吸収されやすい」という点では事実です。しかしそれは「コラーゲンとして吸収される」「コラーゲンとして体内で活用される」という意味ではありません。アミノ酸に分解された後で吸収されてしまうわけです。
実はコラーゲンの問題点を何も解決していないのが「低分子コラーゲン」なのです。
アンチエイジングの真実3:白髪の原因は、メラニン量の不足とは限らない
白髪の原因は、長らく「髪の色素細胞(メラノサイト)の機能が加齢によって低下し、メラニンの生産ができなくなったためである」とされてきました。しかし最近の研究では、原因はメラニンだけではなく、活性酸素の一種である「過酸化水素」が主な原因のひとつだということがわかってきました。過酸化水素の蓄積が、メラニン生成工場であるメラノサイトを破壊してしまう上、メラニン色素の生成を促す酵素「チロシナーゼ」の生成を阻害することが原因であると考えられています。
若い人は過酸化水素を無害化する「カタラーゼ」などの抗酸化酵素が体内で充分に生成されていますが、加齢によって抗酸化酵素の生成力が衰えると、無害化できなくなった過酸化水素が蓄積されてしまい、白髪になってしまいます。
>活性酸素と抗酸化作用について詳しくはこちら「活性酸素と抗酸化作用の真実とは」
アンチエイジングの真実4:「お肌のゴールデンタイム」は、実は存在する
デマだとされている話が、実はデマではなかった、というちょっとややこしいお話。
その昔、夜10時から深夜2時の時間帯は、お肌のゴールデンタイムと呼ばれていました。成長ホルモンがどばどば出るのがその時間帯で、このとき肌の再生や修復がさかんに行われます。「だからこの時間帯に眠るのが良いんだよ」というのが「お肌のゴールデンタイム」説です。
しかし現在では「お肌のゴールデンタイムは実はデマだ」という話が有名になってきています。
「成長ホルモン」は肌のターンオーバーの原動力になるホルモンですが、成長ホルモンの分泌は睡眠後約三時間後にピークを迎えます。時間帯に関係なく、いつ寝ても入眠三時間後であることから「ゴールデンタイムなんて実は無いんだよ。いつ寝てもいいよ。時間帯には関係ないよ」という説明付で紹介され、「お肌のゴールデンタイムは実は存在しない」ということになっています。
が、実は成長ホルモンがより多く分泌される睡眠時間帯が存在することは統計的に明らかになっています。確かに分泌のピークは睡眠後三時間後ですが、夜10時から深夜2時ごろの間に寝た場合に、より多く分泌されるのです。