認知症に効果があると言われるサプリメントの成分は、昔からいろいろあります。シンプルに青魚を食べてDHAやEPAを補ったり、ゴマや納豆が良いなんて話もありました。
ただ、昔はそもそも認知症のメカニズムに不明なところが多かったので、効果的な食品成分についても憶測でしかわかりませんでした。
けれども、近年では認知症の研究が進み、しっかりした効果をもつ成分がハッキリしてきました。また、それぞれの成分についても研究が進められてきました。
ですから今では、最先端の研究のもとで効果を見出された、認知症対策の3大食品成分というものが実は存在します。ほとんどの人にとって聞きなれない成分ばかりかもしれませんが、今回はこの3つの成分について解説します。
認知症対策3大成分『プラズマローゲン・レシチン・フェルラ酸』
実は、2025年には、日本の認知症患者とその予備軍の人口は1000万人を上回ると推計されています。なんと、あと10年と経たないうちに、日本人口の約10人に1人が認知症だという状態になるわけです。65歳以上に限れば、3人に1人が認知症になると予測されています。
認知症になった夫を、認知症の妻が介護する、なんていう状態になったり、一人住まいの高齢者が認知症になったまま気づいたら亡くなっていた、という状況が「よくある話」になってしまうかもしれません。
※ちなみに、認知症は意外と生死に関わる疾患です(特に在宅の場合)。ある程度症状が進行すると、平均して約5年で死亡するというデータがあります。
そういう差し迫った時代の中で、認知症や効果的な成分についての研究は、高齢化社会へ向けた研究テーマとして社会からも重要視されてきましたし、多くの実験・検証が行われました。
そうして「アレがボケ防止に良いらしい」といった旧来の食品成分とは一線を画す、しっかりした科学的検証に裏付けられた最新の食品成分がいくつか発見され、それら成分の研究はここ10年~15年ぐらいで目覚ましい進歩を見せました。
現在、認知症に効果的とされる食品は、おおむね3つに絞り込まれていて、認知症対策3大成分と呼ばれており、それらを配合したサプリメントが流行の兆しをみせています。
その3つの成分とは・・・
- プラズマローゲン
- ホスファチジルコリン(レシチン)
- フェルラ酸
この認知症対策3大成分について、ひとつずつ解説していきます。
プラズマローゲン – 新しい脳神経細胞を生み出す「細胞新生」効果
プラズマローゲンは、もともと人間の体内で活用されているリン脂質の一種です。
リン脂質というのは、脂質の中でも特別な役割を持つもので、細胞膜の材料になったり、細胞の活動を補助したり、体内の情報伝達をしたりと、体内でとても重要な生理機能を担っています。
プラズマローゲンは、そんなリン脂質の中でも、脳神経細胞や心臓の筋肉中などに多く含まれます。
プラズマローゲンの効果
効能としては、主に以下の4つがあります。
- 脳神経細胞を新しく生み出す「細胞新生」
- 自分自身が活性酸素のターゲットになって細胞を守る「抗酸化作用」
- 炎症物質を抑えて活性酸素の大量発生を防ぐ
- 認知症の原因物質「アミロイドβ」を発生しにくくする
認知症は、「アミロイドβ」というたんぱく質が脳神経細胞に沈着して細胞を死滅させてしまうことが直接的な原因となります。けれども、その前の段階として、活性酸素の大量発生や、活性酸素のせいで起こった炎症が根本的な原因となります。
プラズマローゲンの効果効能を一言で言えば、「根本的な原因」も「直接的な原因」も、すべてをトータルにケアする作用を備えているということ。
でも、プラズマローゲンの最大の特徴であり、 プラズマローゲンの最も注目すべき作用は、脳神経細胞を生み出す「細胞新生」という作用です。認知症は脳神経細胞が死滅していく病気ですが、プラズマローゲンは新しい神経細胞をどんどん生み出していき、死滅してもそれを補うことができます。
脳が新しい神経細胞を生み出すためには、BDNFと呼ばれる特別な栄養素を細胞にとりこむ必要があります。プラズマローゲンは、脳の細胞がBDNFを取り込みやすくしてくれます。これによって新しい神経細胞を生み出したり、神経細胞ネットワークの強化につながります。
プラズマローゲンは、これらの効果によって認知症を改善するわけですが……さらにものすごいことに、最近の臨床試験では数百人もの被験者のうち「全員」に効果があったという衝撃的な結果が得られています。
新時代の認知症対策と呼ばれるプラズマローゲン
従来の認知症研究は、アミロイドβによって死滅した細胞を甦らせることに躍起になっていました。そうではなく、「新しい細胞が次々に生み出されれば、死滅した細胞をわざわざ復活させる必要は無いじゃないか」という新しい視点を研究者たちにもたらしました。そのためプラズマローゲンは「新時代の認知症対策」と呼ばれています。
ちなみに、プラズマローゲンの基礎研究を進めた人物は、藤野武彦さんという日本人の研究者です。最近では、テレビ番組でも特集されたりして話題になっています。さすがにまだまだポピュラーとは言えませんが、今最も熱い注目を浴びている成分ではないでしょうか。
プラズマローゲンが多く含まれる食品
ホタテや鶏ムネ肉、ホヤなど……変わったところでは「クジラの脳」などにも多く含まれています(クジラの脳はなかなか食べる機会は多くないと思いますが、料理として出しているお店もあるようです)。
特にホタテなどの魚介類に含まれるプラズマローゲンは、DHAやEPAと一体化したプラズマローゲンが含まれていて、ヒトの脳内にあるプラズマローゲンに近い構造をしているので、より有用だと考えられています。
↓プラズマローゲンについて詳細は、こちらの記事にも書いています。
プラズマローゲンの認知症への効果効能と副作用を徹底解説!画期的なその作用とは?
ホスファチジルコリン(レシチン)- 症状の緩和や予防に焦点を当てた新成分
ホスファチジルコリン(またはレシチンと呼ばれることもあります)は、プラズマローゲンと同じくリン脂質の一種です。人間の身体の中では、やはり脳にたくさん含まれています。
特にアセチルコリンという神経伝達物質の材料になるとして有益な食品成分だと言われています。
ホスファチジルコリン(レシチン)の効果
- 認知機能や記憶力を高めて、認知症の症状を緩和する
- 脳にDHAを送り込む
- 脳の神経線維を強くして、死滅しにくくする
認知症治療において、アセチルコリンという神経伝達物質 の減少を抑えることはとても重要なことです。実際、認知症治療薬の中にもアセチルコリンを分解する酵素のはたらきを抑える薬なんかもあります。
アセチルコリンは、神経細胞に作用して、その活動を活発化したり抑制したりといった調整を行います。認知症の症状の大部分を占める「記憶障害(物忘れ・覚えられない)」という脳の記憶力や認知機能と関連があると考えられています。
ホスファチジルコリンは、コリンという物質とリン酸・脂肪酸・アルコールで構成されているリン脂質なのですが、このコリンがアセチルコリンの材料になります。
でも、食事やサプリでコリン単体を摂取しても、脳へとつづく血管には関所があって、コリンは関所を通過することができないので、脳まで届きません。コリンがホスファチジルコリンに組み込まれることでこの関所を通過でき、脳へ届かせることができます。
また、同様にDHAも、基本的には単体では脳へ届きません。DHAのような脂肪酸は、リン脂質という形態に変化しなければ関所を通過できないのです。逆に言えば、ホスファチジルコリンを摂取することは、DHAの体内活用効率を高めます。
また、ホスファチジルコリンは神経線維を覆っているミエリン鞘という絶縁質の材料にもなります。これは、神経線維の「保護カバー」のようなもので、このミエリン鞘が傷つくことが認知症の原因になりえます。
このように、脳の中で多様なはたらきをしているのがホスファチジルコリンです。プラズマローゲンのように、認知症の原因にアプローチするわけではないのですが、認知症の症状の緩和や予防に焦点を当ててアプローチする成分として注目されています。
ホスファチジルコリン(レシチン) が多く含まれる食品
食品中には、卵黄や、納豆などの大豆製品の中に多く含まれます。基本的にはDHAが多く含まれる魚介類と一緒にとることがおすすめです。
フェルラ酸 – 認知症・脳の疲れを予防して、美白効果も望める
フェルラ酸は、さまざまな植物に含まれるポリフェノールの一種です。超高齢者の認知症改善効果というよりは、比較的若い30代~60代の女性におススメできる最新成分です。
なぜ30代~60代の女性なのかというと、脳ケア+美容効果があるからです。脳の疲れをとりパフォーマンスを高めたり、うつの防止に役立つ上、美容・美白にも役立ち、なおかつしっかりとした認知症予防にもなるというスーパーポリフェノール。それがフェルラ酸です。
フェルラ酸の効果
- 自分自身が活性酸素のターゲットになって細胞を守る「抗酸化作用」
- メラニン生成を抑えて肌の色素沈着を防ぐ美白作用
活性酸素は認知症の根本原因になるものですが、フェルラ酸はこの活性酸素を無力化する抗酸化作用があります。
活性酸素は認知症だけでなく、うつの原因にもなりますし、そもそも脳の疲れの原因になります。だから認知症じゃなくとも、社会人としてバリバリ働いていて、もっとパフォーマンスが出したい人や、ストレスが溜まりがちな人にも、フェルラ酸は有用なのです。
その上さらに、美白効果もあります。美白の敵といえばメラニン色素ですが、メラニン色素の元となるのがチロシンという物質。チロシンが酵素のはたらきによってメラニンへと変換され、肌の色素沈着につながります。
フェルラ酸は、このチロシンととてもよく似た構造をしているので、チロシンがメラニンへと変化する際にフェルラ酸がチロシンと入れ替わって、チロシンのメラニン化を妨げます。結果的にメラニン生成を抑え、シミやそばかすを防いでくれます。
フェルラ酸が多く含まれる食品
米ぬかや玄米、麦などに多く含まれます。ポリフェノールなので、さまざまな野菜や果物・穀物に含まれますが、ほとんどの場合は微量です。
また、コーヒーにも”ある意味では”多く含まれています。というのも、コーヒーそのものにはフェルラ酸は含まれていないのですが、コーヒーには「クロロゲン酸」という健康成分が含まれており、コーヒーを飲んでクロロゲン酸を摂取すると、体内で代謝されてフェルラ酸へと変化します。
認知症対策は、この3つの食品成分に注目しよう
認知症対策3大食品成分、いかがでしたか?
今回ご紹介したのは、どれも最新の研究により注目されている、最先端の認知症対策成分です。
耳慣れない成分が多いとは思いますが、それはある意味当然のことだと言えます。なぜなら、認知症という疾患は、長い間停滞していた研究分野だからです。
症状の原因やメカニズムが不明とされてきましたし、さまざまな仮説が飛び交ってきました。当然、治療薬などもさほど有効なものが見出されておらず、医学研究の世界でもお手上げ状態。それが、つい数年前まで続いていたのです。
認知症対策は、ようやく新たな段階に入りました。それが、今回ご紹介した3大食品成分を中心に進んでいくことになるでしょう。
もしあなたが、これから認知症対策をしようと考えているならば、ぜひこの3大成分に注目しながらサプリメント等を選んでみてください。