便秘にもいろいろ種類があります。最もポピュラーな便秘は『弛緩性便秘』という種類の便秘で、大腸に発生する便秘です。大抵の人はこちらですが、『直腸性便秘』という種類の便秘の人も珍しくありません。
この直腸性便秘、スーパー便秘という俗称もあるほど厄介な便秘なんです。今回は、直腸性便秘と『スーパー便秘』の原因と解消法について解説します。
この記事のここがポイント
- 直腸性便秘は、便意を感じにくくなっている便秘
- トイレを我慢することが多い人がなりやすい
- 朝食をとることで大蠕動をうながす
- 直腸性便秘なら、不溶性食物繊維も使いよう
- 骨盤底筋を鍛えよう
直腸性便秘とは。普通の便秘(弛緩性便秘)との違いは?
直腸性便秘は、腸の出口付近にあたる直腸で起こる便秘です。
ふつう便秘と言えば弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)のことを指し、これは大腸の中でも主に結腸で起こる便秘で、腸の蠕動運動が弱まるなどのせいで、便が出口である直腸にたどり着けなくなるというもの。
しかし直腸性便秘は、出口までたどり着いているにもかかわらず、排便ができないという便秘です。
直腸は結腸よりも太いので、出せずに溜まっていくと便が太くなっていしまいがち。太いと排便するのが余計大変になるので、結腸に溜まるふつうの便秘よりもつらいのです。排便時は便が太いぶん痔にもなりやすいですし、痛いです。
また、慢性化しやすく、腸内がひどく腐敗してしまうケースも少なくありません。便から出たガスや有毒物質などにより体臭が臭くなってしまったり、免疫力が低下し病気になったり、大腸がんにもつながりやすい便秘といえます。
直腸性便秘の原因
このように厄介な直腸性便秘。原因は何でしょうか?
トイレを我慢することが多い
仕事の都合でトイレにいけなかったり、痔や直腸の障害などで排便時に痛みがあり、ついつい便意を我慢したりしていませんか?
日常的に便意をガマンしていると、直腸の神経が刺激に慣れてしまうので、脳も排便しなさいという指令を出さなくなってしまいます。つまり、便意を感じなくなってしまうのです。
また、我慢することだけでなく、下剤の乱用なども直腸の神経を鈍らせるため、直腸性便秘の原因になります。
直腸性便秘のメカニズム
ふつう、便が直腸まで到達すると、便の重みによって受けた刺激が骨盤神経を経由して大脳に伝わり、便意になります。これを排便反射といいます。
普段トイレに行ける機会が少ないなどで排便を我慢していると、この反射が少なくなるため、便意を感じなくなってしまうのです。
加齢による神経の鈍化や筋力の低下
年齢を重ねることで、直腸の神経細胞の数が減っていくため、便意を感じる神経がだんだんと鈍っていき、便意を感じられなくなってしまいます。また、単純に筋力が落ちるため、大腸の収縮力が弱まる上、大腸の蠕動運動も弱まり、食べ物の腸内での運搬が遅くなります。そのため便意を感じる機会が減り、排便反射が衰えます。
骨盤底筋が緊張してしまう”アニスムス”
アニスムスとは、骨盤底筋をゆるめることができなくなる症状のこと。
肛門やその周辺が緊張のためふさがってしまっているので、出そうにも出せません。これが原因である場合は、乳酸菌を飲んだり食物繊維をとったりしても治らないため、改善するためには排便時に骨盤底筋を緩められるようにするための訓練が必要です。専門の病院で相談しましょう。
直腸性便秘の対策
直腸性便秘の主な原因は、習慣のために神経が鈍っていたり便意を感じにくくなっていることなので、すぐに改善することは困難な便秘です。そのため慢性化しやすい便秘といえます。直腸性便秘かな?と感じたら、早めに対処しましょう。
排便を我慢しない
排便を我慢することは、仕事中などは仕方ない場合もあるでしょう。しかし可能なかぎり、排便の機会は逃さないようにしましょう。
下剤は厳禁
下剤自体が直腸性便秘の原因になりえます。下剤というのは、無理やり排便を促すものです。そのため利用しすぎると、排便反射はますます衰え、直腸の神経を鈍らせる原因になります。
朝食をとる
一日の中で1~2回だけ、特に大きな蠕動運動である大蠕動が起こります。そしてこの大蠕動は、朝起きて朝食を食べた後に起こりやすいとされています。
朝食をしっかりとることで大蠕動が起き、直腸への便の急激な運搬が行われ、直腸への強い刺激につながります。これにより、排便反射が回復するきっかけとなるかもしれません。
便秘が落ち着いたら、不溶性食物繊維もバランスよくとる
インターネットではよく「不溶性食物繊維をとってはだめだ」という記事を見かけます。確かにふつうの便秘(弛緩性便秘)では、不溶性食物繊維ではなく水溶性のものを摂ることが推奨されます(詳しくは>>『頼れる便秘対策「水溶性食物繊維」食物繊維の間違った摂り方に注意!』で書いています)。しかし直腸性便秘の場合は、不溶性の食物繊維をそれなりに摂りましょう。
その理由は、不溶性食物繊維は便のかさを増やし、直腸を刺激しやすくするためです。
排便反射を回復させるために不溶性食物繊維も活用する
便秘で何日もたまっているときは、便が固く大きくなっているので不溶性食物繊維はとらず、まずは便を出します。出すことに成功したら、その後は不溶性食物繊維をある程度とり、便のかさが大きくなるような食事内容を心がけます。
直腸性便秘の原因は、排便反射が弱まり便意を感じにくくなっていること。ですから、ある程度の手ごたえのある便を出すために、不溶性食物繊維もそれなりに摂りましょう。
排便反射を強くして、慢性化してしまった便意の弱まりを改善していくことを目指しましょう。体調や便の固さによって食事内容を調整できればベストです。
骨盤底筋を鍛える
骨盤底筋は、その名のとおり骨盤の底にある筋肉です。膀胱や直腸を支えており、これが緩んでしまうことで便の排出が困難になります。特に女性や高齢者は、これが緩んでしまうことで排便を行うことができず、残便感につながってしまうケースがあります。
骨盤底筋の鍛え方としては、運動法などもあるのですが、最も簡単なのは「尿を止める」という方法があります。排尿中に一瞬力を入れて排尿を止めて、また出す、という行為で骨盤底筋を鍛えることができます。