トリプトファンの摂取は無意味?「寝つきを良くする食品成分」のホントの所

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寝つきを良くする、眠りを改善する食品成分として、インターネットメディア等では、しばしばトリプトファンという成分が紹介されます。

また、「眠りを改善する」とうたっている健康食品などの有効成分として、トリプトファンが入っていることも多く、中には主成分として配合されていたり、大々的に宣伝していたりするケースもあります。おそらく、眠りを改善する成分としては最もポピュラーなもののうちのひとつではないでしょうか。

はたしてこのトリプトファン、本当に、寝つきを良くしてくれる効果はあるのでしょうか?仮にそのような効果があるとして、一体どれほどの効果があるのでしょうか?

結論からいえば、効果がまったく無いとは言いません。言いませんが……

というわけで今回は、トリプトファンの効果効能と、寝つき改善に役立てる上での問題点についてご紹介します。

この記事のここがポイント

  • トリプトファン → セロトニン → メラトニン=寝付き改善
  • トリプトファン~メラトニンへの変化は、すべて脳内で起こす必要がある
  • トリプトファンを経口摂取したなら、脳へ送り込まなければならない
  • トリプトファンは全身で必要とされるので、脳で活用されるとは限らない
  • 脳へと続く通路には関所があり、トリプトファンは関所を通過しづらく、脳へ届きにくい

トリプトファンと睡眠の関係

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さて、まずは睡眠のメカニズムについて知っておきましょう。

寝つきの良さ・悪さを左右するのは、メラトニンという安眠ホルモンです。メラトニンが分泌されると、徐々に脳の機能が弱まり、脈拍や体温などをコントロールして、睡眠に適した状態になるよう体の状態を整えます。

このメラトニンが、寝つきの良さや、睡眠の深さ・睡眠の質を左右しています。睡眠にまつわるすべての鍵を握っているのが、メラトニンなのです。

さて、メラトニンはセロトニンという神経伝達物質を材料にして、体内で産生されます。

セロトニン → メラトニン

セロトニンは、昼間に太陽光を浴びる(目にする)ことで分泌が促されるのですが、その後夜になって暗くなってくると、セロトニンがメラトニンへと変わります。

つまりメラトニン量を左右しているのが、セロトニンというわけです。

セロトニンの原料となるのがトリプトファン

では、セロトニンは何を材料として体内で産生されているかというと、これが必須アミノ酸の一種であるトリプトファンです。

トリプトファン → セロトニン → メラトニン

「トリプトファンがセロトニンになり、セロトニンがメラトニンになって寝つきが良くなる」。トリプトファンが眠りを改善するメカニズムとしてよく見かける説明が、この図式です。

ただし、ここが重要なのですが、トリプトファン~メラトニンという一連の流れは、すべて脳内で起こっていることだ、という点です。トリプトファンがセロトニンの材料として利用されるのは、あくまで脳内で発生する出来事。このことを覚えておいてください。

トリプトファンが効かない理由

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さて、巷の健康食品などからトリプトファンを食べること……つまり、トリプトファンの経口摂取は、本当に眠りを改善してくれるのでしょうか?

その疑問の答えを知るために、経口摂取したトリプトファンが胃や腸でどのように吸収されて、その後どうなるのかを考えてみましょう。

トリプトファンは、ありふれた単なる必須アミノ酸

トリプトファンはごく普通の単なる必須アミノ酸ですから、ほかのアミノ酸と同じように、全身でさまざまな形で利用されます。
アミノ酸は、筋肉や肌などの体づくりや血液などの材料となったり、免疫にも関与している重要な栄養ですが、トリプトファンも同様に、非常に広範囲に体内で活用されます。

ここで重要なことは、トリプトファンを摂取しても、それが必ずしも眠り改善のために活用されるわけではないということです。あなたがどれだけ「眠りを改善したい」と思ってトリプトファンを摂取しても、体はあなたの意志のとおりにトリプトファンを活用してくれるとは限りません。

トリプトファンを経口摂取しても、脳まで届きづらい

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栄養素は血流に乗って全身へと運ばれますが、脳へと続く血管には、血液脳関門という関所があります。

この関所では、脳が必要とする物質だけが中に入ることを許され、有害な物質や不足していない物質などは関所ではじかれます。脳は体の中でも非常に重要で繊細な機関なので、この関所で出入りを制限しているのです。

さて、先述しましたが、トリプトファンは脳内でセロトニンへと変換されるため、睡眠改善にトリプトファンを役立てようと考える場合、経口摂取した後は胃や腸を経由して、脳へと送り込まなければなりません。その際に問題となるのが血液脳関門です。

トリプトファンは、血液脳関門を通過しにくい物質です。血液脳関門を通過することは可能なのですが、そのためには様々な条件や化学反応が重なることが必要になります。それに、脳はトリプトファン以外にもさまざまな他のアミノ酸を必要としていますので、「トリプトファンをたくさん食べる=血液脳関門を通過できるトリプトファン量も増える」というわけではありません。

もしもトリプトファンの不足を恐れるなら、ふつうにご飯を食べましょう

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トリプトファン自体、ごく普通の健康的な食生活を送っている人ならば、不足することはまず無いでしょう。

なぜならトリプトファンは、非常にありふれたアミノ酸だからです。必須アミノ酸なので、普段の食事でたんぱく質を含む食品を食べることで、簡単に摂取できます。
そして、炭水化物をとると、インスリンの作用によってトリプトファンが血液脳関門を通過しやすくなるという実験結果があります。

もちろん、タンパク質も炭水化物も摂り過ぎはよくないわけで、バランスの良い食事が大切ってことです。

ともかく、トリプトファンは簡単に摂取できるものであり、眠りの改善という点では「トリプトファンの摂取量」は大した問題ではないのです。

いかがだったでしょうか?
眠りを改善する食品成分として最もポピュラーであるはずのトリプトファンですが、ポピュラーな方法が最も優れている方法であるとは限りません。

眠りの改善に本当におすすめできる食品成分は、以下の記事でご紹介しています。

参考文献:食べ物を変えれば脳が変わる

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