活性酸素と抗酸化作用に関する話は、詳しく説明しようとすると実は結構大変なんです。
なぜかというと、
- 「活性酸素」と一口に言っても、何種類もある。
- しかもそれぞれの活性酸素に対応した抗酸化食品をとる必要がある
- その上、抗酸化食品にも脂溶性・水溶性といった種類があり、働き方が異なる
という具合に、けっこう複雑なんですね。そこにきて、デマ情報なども飛び交っているのでさあ大変です。
たとえば…抗酸化作用のある食べ物などを食べることで、以下のような効果があるといわれていますよね。
- 細胞の老化防止
- 疲労回復
- 病気の予防
……ですが、このうち「老化防止になる」というのは、実は現在のところ疑問視されています。
インターネットでちょっと調べると、シミ・シワなどに抗酸化作用がいい!なんてうたい文句を目にしますし、抗酸化作用のある食品などに興味を持つ人の中には、そういう目的の方もたくさんいるでしょうけど、ご注意ください。肌の細胞の老化という点ではあまり役に立たないと思われます。
この記事のここがポイント
- 人体は抗酸化酵素によって活性酸素から守られている
- 「ヒドロキシルラジカル」がヤバい。なので、これの発生を阻止する
- 抗酸化酵素は経口摂取しても意味がない
- 抗酸化酵素の体内生産をサポートする成分
- 抗酸化物質は脂溶性と水溶性の両方とる
- 最強の抗酸化サプリはどれ!?
活性酸素が発生して悪さをするまでに起きていること
活性酸素は、私たちが生きて呼吸をしている限り、常に体内で発生しています。
私たちは、日頃の食事によってカロリーや各種栄養を摂取し、それを体内へ吸収してエネルギーに変換しています。でも一体、体のどの部分でエネルギーへと変換しているんでしょうか?
実は、全身にある細胞ひとつひとつの内部でエネルギーを生産しているんです。そしてエネルギーの生産時に「スーパーオキシド」という活性酸素が発生します。
人体に備わった初期段階の抗酸化機能「SOD酵素」
スーパーオキシドは有害な活性酸素ですが、体内にはスーパーオキシドをすみやかに除去する機能が備わっています。スーパーオキシドが発生すると、体内の「SOD酵素(スーパーオキシドディスムターゼ)」という酵素によって「酸素」と「過酸化水素」へ分解することで除去します。これが活性酸素から身を守るための最初の防衛システムです。
二段階目の抗酸化機能「カタラーゼ」
SOD酵素の働きによって、スーパーオキシドは除去できましたが、替わりに過酸化水素が発生します。過酸化水素も活性酸素の一種です。漂白剤や歯磨き粉などに入っていて身近にある便利な成分ですが、体内ではかなり厄介な働きをします。
というのも、過酸化水素は、より強力な酸化力を持つ別の活性酸素「ヒドロキシルラジカル」に変化してしまうのです。「ヒドロキシルラジカル」は、体内で悪さをする主な活性酸素だと考えられていて、最悪の活性酸素と言って良いほどのもの。
しかし、これまた体内には「カタラーゼ」という酵素によって過酸化水素を無害化し、ヒドロキシルラジカルの発生を阻止する仕組みが備わっています。これが二段階目の防衛システム。
余談ですが、2009年の学会発表によると、過酸化水素は白髪の原因のひとつであると考えられるとのこと(>>詳しくはこちら「アンチエイジングの真実」)。
抗酸化のポイント
というわけで、ヒドロキシルラジカルを発生させないために、人体には二段階の防衛システムが備わっているわけですね。
ですから、抗酸化のポイントは、
・「SOD酵素」と「カタラーゼ」の体内生成をサポートすること
が重要になります。また、その上で、
・それでも発生してしまったヒドロキシルラジカルを除去すること
・光によって発生する活性酸素もあるので、これを除去すること
ここまでやれば完璧です。
ちなみに、ヒドロキシルラジカルを分解する酵素は、体内には存在しません……。こちらは体内に備わる酵素の力ではなく、食品などで外から摂りいれた抗酸化物質で除去しなければなりません。
SOD酵素とカタラーゼの生成力を高める方法
どうやらSODやカタラーゼを直接摂取できるサプリなども存在するようですが、眉唾も良い所です。実はSODやカタラーゼといった抗酸化酵素は、経口摂取で摂り入れることは難しいんです。
なぜなら、酵素=たんぱく質の一種なので、熱や胃酸によって変質しやすく、腸で吸収するころには大半は見る影もなくなっています。全く意味がないわけではないんですけど、吸収率は低いのが欠点です。食事+専門のサプリなどで補わないかぎりは、経口摂取で十分量を摂るのは(20代の若者ならいざしらず、特に体の機能がピークを過ぎた年代の人にとっては)難しいのです。
そのため、SODやカタラーゼを直接摂るのではなく、体内で間接的にSODへ変換されたり、酵素の生産を強化したりする栄養素を摂るという方法をとります。
酵素を強化するオキシカイン
メロンから抽出される成分で、SODやカタラーゼの生産を強化します。
オキシカインは、それ自体がダイレクトに活性酸素を除去するのではありません。腸で吸収された後、抗酸化酵素の働きを強化する応援団のようなものになります。細胞内にとどまって抗酸化酵素に働きかけ、たくさんの活性酸素の除去に関わり続けることができます。
ただ、直接酵素に変換されるわけではないので、体感には個人差が大きいという声もあります。
発生してしまったヒドロキシルラジカルを「グルタチオン」で除去する
Nアセチルシステイン(略称:NAC)
体内で作られる抗酸化物質にグルタチオンというものがあり、これは最も大切な抗酸化物質の1つと言われています。Nアセチルシステインは、グルタチオンになる前の段階の物質(前駆体)です。これを摂り入れることで、体内のグルタチオンの量を増やすことができます。
NAC(Nアセチル システイン)600mg(海外直送品)
一重項酸素:光によって発生する活性酸素への対策
活性酸素の一種に、「一重項酸素」というものがあります。
紫外線を浴びることをきっかけとして発生するもので、これ自身も強い酸化力を備えているうえ、他の物質と結びついて「ヒドロペルオキシド」というさらに強力な活性酸素に変化してしまいます。
これを除去する物質の代表的なものとして「リコピン」や「アスタキサンチン」などのカロテノイドや「イミダゾールジペプチド」が知られています。
リコピン
トマトに多く入っています。
日本国内で身近に手に入る抗酸化成分の中では、このリコピンとアスタキサンチンが最も強力な抗酸化力をもっている成分ですが、わずかながらリコピンの方が抗酸化力で上回っています。つまり抗酸化成分の日本チャンピオンです。
ただし、リコピンは吸収率が低く、また調理の仕方によっても成分の安定性を失う場合があります。そのため、サプリメントなどで摂るほうが安定しているようです。
アスタキサンチン
鮭の身やイクラの赤さの正体として知られている色素・アスタキサンチン。リコピンには若干劣りますが、アスタキサンチンはビタミンEの500倍~1000倍の抗酸化力を持つと言われています。
リコピンには劣るかわりに、脳や眼といった末端まで届きます。そのため眼から入った光によって発生する活性酸素を防ぎ、目を守ることができると言われています。
吸収率はリコピン同様、あまり良くないようです。
イミダゾールジペプチド
厚生労働省と文部科学省の研究班がスタートさせた「抗疲労プロジェクト」という研究結果によれば、23種の抗疲労成分のうち、肉体疲労に最も効果的だった抗酸化成分がこのイミダゾールジペプチドだったようです。(イミダゾールジペプチドについては「”バレニン”が凄い!疲労回復成分・イミダゾールジペプチドの最新種」という記事内で詳しく書いています)
抗酸化物質には脂溶性と水溶性がある
活性酸素は細胞を酸化させます。酸化とは、酸素と結合させることです。
そして、抗酸化物質とは何なのかを簡単に一言で言えば「細胞の身代わりになって酸化してくれる物質」です。「抗酸化物質」なんていう呼び名なので、まるで”絶対に酸化しない物質”であるかのように感じますが、むしろ酸化することが彼らの役割なのです。
酸化された物質は、尿などで体外に排出できるものはすみやかに排出しなければなりませんし、尿として排出しにくいものは無害化しなければなりません。それは「役目を終えて酸化した抗酸化物質」も同じです。
ですから、「酸化した抗酸化物質を無害化するための抗酸化物質」がさらに必要になります。
このことからわかるように、抗酸化成分は1種類だけ摂るより、2,3種類摂るほうが望ましいんです。
抗酸化成分は脂溶性のものと水溶性のものをセットで摂ろう
抗酸化成分には、水に溶ける水溶性のものと、水に溶けない脂溶性のものがあります。
水溶性の抗酸化物質は、酸化した後は尿として体外に排出されます。抗酸化物質の中でも脂溶性のものは、水溶性のものよりも抗酸化作用が強力なものが多いのですが、尿として排出されません。
ですから、役目を終えた脂溶性の抗酸化物質を、水溶性の抗酸化物質で無害化して、水溶性抗酸化物質は尿として排出する、という流れが理想です。だから脂溶性と水溶性をセットで摂るのが良いのです。
たとえば某社のハイ●オールCという製品には、Lシステインという抗酸化物質が入っていますが、同時にビタミンCも入っています。ビタミンCは水溶性の抗酸化成分です。
抗酸化成分の過剰摂取による副作用は、脂溶性のものに多い
抗酸化物質を過剰摂取することが害になる場合もあります。
喫煙者に、ある種の脂溶性抗酸化成分のサプリメントを与えたところ、肺癌の進行速度が上がるという結果が現れたそうです。また実験により、脂溶性の抗酸化物質を補給すると死亡率が高まったそうですが、ビタミンC(水溶性)ではそのような結果は見られなかったそう。
そのため、水溶性の抗酸化成分をしっかりとり、脂溶性の抗酸化成分を排出できるようにしましょう。
結論。私が考える最強の抗酸化サプリの組み合わせはコレ!
- リコピン(脂溶性)、または、眼の健康に関心があるならアスタキサンチン(脂溶性)、肉体疲労に関心があるならイミダゾールジペプチド(脂溶性)
- Nアセチルシステイン(水にも脂にも溶ける万能型)
- オキシカイン
さすがにこの4つを同時にとれるサプリなんていう都合の良いものは無いんですが、リコピンやアスタキサンチンは食事でも比較的摂りやすいです。
ちなみに、私が常用しているのは、NACとオキシカインです。これをサプリで補っています。
リコピンは、食事で摂るならトマトが良いです。吸収率はあまり良くないとはいえ、脂溶性なので油と一緒にとると吸収が良くなります。油を使った料理の付け合せに生のトマトを添えて、一緒に食べると良いでしょう。ちなみに、リコピンは生食のトマトでとるのはおすすめですが、煮ると構造が不安定になります。
サプリで摂る場合、NACは脂にも溶けますが水にも溶けるため、水溶性のものと同様、尿として排出されやすいので、これをリコピンやアスタキサンチンの補助として摂ると良いでしょう。