更年期・閉経後の女性は高血圧や動脈硬化のリスクが急上昇。女性ホルモンの減少と動脈硬化の関係とは?

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更年期を迎えるまで、女性のカラダは、女性ホルモン・エストロゲンによって守られています。
エストロゲンには実にさまざまな働きがあり、本当に便利で心強いホルモンです。

ですが、それも更年期まで。閉経後から以降は、今まで自分を色々な面で守ってくれていたホルモンが、分泌されなくなってしまうわけです。

だからこそ更年期にはさまざまな症状に悩まされますし、それ以降も、ある種の病気についてはリスクが非常に高まります。

特に気を付けたいのが、コレステロールや血流にまつわる病気です。たとえば高血圧などですね。この種の病気は中年以降の男性に多いと思われがちですが、実は閉経後の女性のほうが有病率が高かったりします。

その原因はもちろん「エストロゲンが体を守ってくれなくなったせい」です。

今回は、更年期以降の脂質異常系の症状についてのお話です。コレステロールに始まり、動脈硬化生活習慣病、最悪だと生死にかかわる合併症へも発展する可能性があるので、放っておいてはダメですよ。

この記事のここがポイント

  • ふたつのコレステロール、LDLとHDLの違いと、肝臓の役割
  • 若い頃は、エストロゲンがHDLや肝臓の働きを高め、LDLの増加を抑えてくれてた
  • でも、エストロゲンさんはもういない……LDLコレステロールが増えやすくなる
  • コレステロールのせいで血管壁が厚くなる→高血圧に
  • 高血圧の状態が続くことで動脈硬化→血管が詰まったり、重い合併症も…

更年期以降はLDLコレステロールが増えやすくなる

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更年期に入り、エストロゲンの分泌が不足すると、コレステロールにまつわるトラブルをかかえるリスクが高まります。

コレステロールは肝臓で作り、肝臓へと回収するもの

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コレステロールは、そのほとんどが肝臓で作られています。
実は、体内の約8割ものコレステロールは、肝臓が生産したものです。食べ物に含まれるコレステロールを気にして食事を制限している人がよくいますが、食事によって摂取したコレステロールは、全体の2割程度しかありません(なので、コレステロールを気にした食事制限は、実はあまり意味がなかったりします)。

肝臓は、体内の脂肪酸などを材料にしてコレステロールを作り、それをLDLという運び屋の”荷台”に載せて、LDLは血流に乗ってコレステロールを各組織へ運んでいます。

LDLの荷台に積み込まれたコレステロールが、悪玉として有名なLDLコレステロールっていうやつです。健康診断で数値を確認することができるので、ご存知の方も多いでしょう。

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一方、各組織で活用されて余ったコレステロールや、血管壁などにたまったLDLコレステロールを回収して、肝臓へと戻す役割をしているのがHDL。いわゆる善玉コレステロールです。これも健康診断で数値を確認できますね。

つまり、肝臓で作ったコレステロールをLDLが各組織へ輸送し、HDLが余りを回収して肝臓へ戻しているわけです。

更年期の女性とLDLコレステロールの関係

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さて、更年期に入るとエストロゲンの分泌が急激に減少しますが、するとどうなるのでしょうか。

肝臓は、HDLが回収してきたコレステロールを取り込んで再利用しますが、エストロゲンには、この肝臓での取り込みを促進したり、HDLを増やしたりする作用があります。

そのため更年期に入り、エストロゲンの分泌が減少すると、肝臓のはたらきは鈍るわ、HDLの量は減るわで、コレステロールの取り込みが行われにくくなります。
その結果、LDLコレステロールが血中に多く含まれるようになり、いわゆる高脂血症(脂質異常症)という状態に陥ります。

更年期以降の女性は内蔵脂肪がつきやすい

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「健康診断でLDLコレステロール値が高かったけど、そんなに太ってはいない気がする……なんで?」

という人もたまにいます。コレステロールの数値が高くなると、それが体型にも表れるはずだと思っている人が多いということでしょう。

しかし、女性は更年期になると、「太り方」が変わってきます。

本来、女性は皮下脂肪がつきやすく、男性は内臓脂肪がつきやすいのですが、女性が閉経を迎えると、男性のように内臓脂肪がつきやすくなります。そのため、思いのほか体型的な変化が感じられなかったり(そして、体型に変化が現れる頃には、すでにピンチに陥っている)、太る部位が若い頃とは変わってきたと感じるようになるのです。

内臓脂肪がつくことは、皮下脂肪がつくことよりも体にとっては危険なことです。
たとえば血糖値。内臓脂肪は血糖値を下げるホルモン・インスリンの効きを悪くするので、血糖値が下がりにくくなり、メタボや糖尿病のリスクを高めます。

更年期以降の女性は、高血圧にもなりやすい

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また、更年期以降の女性は高血圧にもなりやすいです。なぜなら、エストロゲン減少によって増えたLDLコレステロールが高血圧の原因だからです。

血中のLDLコレステロールの量が増えると、高血圧→動脈硬化に

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血中のLDLコレステロールが増えすぎると、どうなるでしょう?

まずはコレステロールが血管壁へと取り込まれて、蓄積されます。血管壁に蓄積されたLDLコレステロールも、本来はHDLが回収していたものなのですが、エストロゲンの分泌不足のせいでHDLの量が減少しているため、回収できず、蓄積されつづけます。

その結果、血管壁が分厚くなり、血管が狭くなります。すると血液が通りにくくなるので、体は血圧を上げて無理やり血液を流さなければならなくなり、高血圧となります。

さらにさらに、エストロゲンは血管を拡張させる神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌を促すはたらきもしてくれていました。ですから、更年期を迎えてエストロゲンの分泌が激減すると、より血管が拡張しにくくなります。なおさら血液が通りにくいので、高血圧になりやすいのです。

つまり、更年期のエストロゲン分泌減少が、

  1. LDLコレステロール値上昇
  2. アセチルコリンの分泌減少により血管が拡張しづらくなる

この2点を引き起こし、それぞれが相互に作用して、高血圧が加速してしまうのです。

そして、高血圧の状態が続いてしまうと、高い圧力に耐えるために血管壁はさらに厚くなって、血管が弾力を失ってしまいます。これが動脈硬化です。

そして、動脈硬化が重い合併症へと発展

動脈硬化になり、血管の弾力がなくなれば、血液はよりいっそう流れにくくなり、高血圧状態はますますヒートアップ。

その高い血圧に耐えるために、さらに動脈の内壁を厚くしなければならなくなり、動脈硬化はどんどん進行し、最終的には血管がほとんど詰まってしまうような状態に。

血管が詰まると、足の指などの末端に栄養が届かなくなるので、壊死を起こして切り落とすことになってしまったり、心筋梗塞脳梗塞のような重症の疾患を合併してしまうことになります……。

更年期以降の高血圧や動脈硬化を防ぐ方法

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今回ご紹介した高血圧や動脈硬化についてのお話は、更年期以降〜老年期の方も含めた、女性特有の体の変化にまつわるお話です。
女性ホルモン・エストロゲンの分泌量低下がすべてのキッカケだという点に、お気づきでしょうか?
男性の高血圧や動脈硬化とは、またちょっと対策方法が変わってくるのです。

分泌されなくなったエストロゲンを補助しつつ、コレステロール増加やアセチルコリンの減少へも対処することで、血液が流れやすい環境をつくる……これこそ、女性特有の高血圧・動脈硬化においては、最も良い対策方法となります。

詳しい対策は、以下のページで紹介しています。

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